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死を前に患者の話聴く


読売新聞の記事からの引用です。

人生の終りに心に押し寄せる空虚感、孤独感。穏和ケア病棟は、体の痛みだけでなく、心の痛みを癒やすための場でもある。

宮崎県都城市の岩満宣子さん(当時73歳が、同市内の三州病院穏和ケア病棟に入院したのは2008年7月。肺がんのため、宮崎大病院(宮崎市)で約1年前から治療を続けてきたが、がんが進行し、家族が自宅近くでの穏和ケアを希望した。

個室には昼夜、夫の金俊さん(85)が付き添った。病棟医長の横山晶子さんは「ご夫婦でいろんあ思い出をたくさん話してください」と、金俊さんに告げた。

病室には、写真が留められる掲示板が備えられている。50年連れ添った夫婦。4人の子どもらと撮った写真で、いっぱいになった。金俊さんは「1枚1枚に思い出が詰まっていた。どれも大事な記憶。話は尽きなかった」と振り返る。

金俊さんがいない時は、横山さんや担当の看護師が、宣子さんから話を聴くこともあった。中学3年生で母親を亡くし、弟、妹のため、若くから働いたこと、金俊さんと出会い、子育て。「もう3人くらいは子どもがいても育てられたのに」と笑って話すこともあったという。「今、このまま逝ってもいい気持ち」「母が待っている」―。宣子さんからは時折、そうした言葉が聞かれるようになった。「死を意識した患者は人生やつらさ、悩みを語ることで考えを深めていく。話を聴くのはその手助けです」と、横山さんは話す。

横山さんが学んだ「対人援助・スピリチュアルケア研究会」は、現在は京都ノートルダム女子大特任教授の村田久行さんらが設立。06年から医師、看護師ら向けに研修会を開き、約400人を医療の現場に送り出している。村田さんは「死に臨んだ患者の気持ちを十分に理解することは難しくても、上手に話を聴く訓練を積むことで、患者の助けになれる」と話す。

死を前にした患者の話は、唐突に始まることも珍しくない。同病院では、患者が語り始めると、担当の看護師らは他の仕事を中断して、患者の話を聴くことを優先。その分の仕事は別の職員がカバーする仕組みを作っている。

死の前日、宣子さんは、集まった家族に、文字ボードを使い「ありがとう」と気持ちを伝えた。その後、意識をなくし、集まった家族に送られ、亡くなった。

「穏和ケア病棟で過ごした54日間は充実していました。感謝しています」と、夫の金俊さんは振り返る。 

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